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Google I/O 2021 Keynote: Android 12注目の新機能まとめ

2021年5月18日(現地時刻)Google I/O 2021 KeynoteよりAndroid関連のトピックをお届けします。2年ぶりのGoogle I/Oはデジタルイベントとして開催、すでにオンライン上に全セッションが公開されています。

Keynote、Develoer KeynoteそしてWhat’s new in Android、What’s new in Google PlayよりAndroidやモバイル分野の新機能を紹介します。パーソナライゼーションおよびプライバシーを中心にJetpack Composeなど新機能・新技術が目白押しです。本記事ではモバイル業界の動向と共にAPIやテクノロジーを解説します。

Google I/O 2021はデジタルイベントとして開催(Google I/O Keynoteより)

キーノートの動画は公開されており、YouTubeより視聴できます。わかりやすくメッセージを伝えている動画は理解の手助けになります。気になるトピックを見てください。

Google I/O Keynote 動画

新しいマテリアルデザインの登場

パーソナライズを念頭に置いたMaterial Youの発表(Google I/O Keynoteより)

Material Designは2014年6月に発表されて以来、AndroidのUXの中心に位置し続けたデザインシステムです。これまでもテーマ性を打ち出したMaterial Themingなど表現力を増す試みが行われていました。

Material Youはユーザーの好みに合わせたパーソナライズを標榜しており、アプリやデバイスの枠を超えたユーザー体験の統一に挑戦しています。

アプリケーションだけでなくAndroid OSやウィジェットもパーソナライズの対象になる

サービスを横断したデザインの統一は高度なデザインシステム(コンポーネント化、適切なレイアウトそしてリソース管理)が求められます。Android 12でもウィジェットが書き換えられるなどOSレベルでの対応を行っています。

https://blog.google/products/android/android-12-beta/ よりパーソナライズされた一例

Android 12 Betaでもパーソナライズ対応が進んでいます。上記2つのリンクからマテリアル・ユーの思想やAndroid 12での実装方針を学べます。アプリ開発者としては試行錯誤が求められる難易度が高い変更といえます。

Android 12 Beta1リリース

KeynoteのなかではAndroid 12 Beta1およびAndroid Studio Bumblebee (2021.1.1) Canary 1が発表されました。どちらも本日より利用可能です。

Android StudioはArctic Fox (2020.3.1) Beta 1リリースも行われており、コードネームは予告通りArctic Fox, Bumblebeeと恒例のアルファベット順を採用しています。

アクティブなAndroidデバイスは30億を超えてたことも発表がありました。順調にスマートフォン以外にも広がっている様子が伺えます。

より洗練されたプライバシー保護

Android 12ではより深いパーソナライズ、プライバシーと安全、30億という母数の大きさを生かしたマルチデバイスでのより良い体験の提供の3点で訴求しています。

Android 12の特徴を伝えるスライド

パーソナライズではマテリアル・ユー/What’s new in AndroidではマテリアルNEXTと表現していたデザイン面での刷新とAIの進化に伴うレコメンデーションの強化を特徴と上げています。とくにマテリアルデザインの変化はthe biggest challengeと表現してパーソナライズによるユーザー体験変化を伝えてます。

一般にパーソナライズはコンバージョンの向上(消費行動やブランディングに強く影響します)をもたらすことが知られています。一方プライバシーとも関連が強く、この懸念を払拭すべくAndroid 12からPrivate Compute Coreの搭載も合わせて発表しています。

オープンソースのセキュリティ保護機構Private Compute Core

Android 12で搭載するPrivate Compute Coreはネットワークから分離されローカルデバイスで動作します。セキュリティコミュニティからのレビューを受けているとしてオープンソースの強み(透明性)を活かしたセキュリティとプライバシーを守るアプローチです。

Googleの取り組みとしてもダッシュボードとインジゲータをAndroid 12に搭載し、位置情報の取得やカメラやマイクの利用を可視化し、デバイスのプライバシーが守られている状態を維持します。

ダッシュボードはAndroid 12 Beta2より提供開始(Beta1では未対応。Developer Keynoteより)
右上に緑のドットが点滅すると利用中を意味する(Keynoteより)

Android端末とChrome OSとの連携やAndroid TVやWearなどマルチデバイス連携の推進にはAndroid Carも含まれており、スマートフォンをデジタルキーにすることでセキュリティと利便性が両立できる取り組みを紹介しています。Android 11よりデジタル免許証などにも対応しており、Android 12でも応用範囲が拡大しています。

Androidデバイスを自動車の鍵に。

Developer Keynote:Android 12の新機能

Developer KeynoteはAndroid 12のパフォーマンス改善、ウィジェットの刷新、Androidの開発ツールキットのアップデートなど1時間の限られたセッション時間に盛りだくさんの紹介がありました。非同期処理の調査を手軽に行えるBackground Task Inspectorを使えばバックグラウンドタスクを可視化できるなど生産性を向上させる工夫に触れられています。

Background Task Inspectorの紹介ブログ https://medium.com/androiddevelopers/background-task-inspector-30c8706f0380

2021年7月 Jetpack Compose 1.0リリースを予告

Developer Keynoteではライブラリ集Jetpackのなかでも次世代UIツールキットJetpack Composeに言及し、2021年7月の1.0正式版リリースを予告しました。

Composeの開発には2年以上の期間をかけており、従来の命令ベースのViewからソースコードからすぐにプレビュー出来るなど生産性の高いComposeの利用を推奨しています。

次世代UIツールキットのJetpack Compose
アニメーション/プレビューが簡単に実現できる(赤枠がアニメーションのためのコード部分)
Developer KeynoteではFlutter 2.2やFirebaseの新機能も紹介

What’s new in Android

恒例の新機能紹介では概要を広く知れます。詳細を知りたい場合のポインタとして利用してください。

What’s new in Android(30分程度)

主な変更はデザイン、デフォルトテーマ、マテリアルNEXT(編集注釈:動画中でのマテリアルNEXTは次世代のマテリアルデザインという意味で利用しているようです)、ブラー効果、Toast機能の変更、Picture in Pictureのアニメーション改善、アプリ起動のブロードキャスト(通称トランポリン問題)による起動遅延、オーバースクロール時のバウンズエフェクト、高級感のあるリップルエフェクト、高圧縮のAVIFフォーマット(静止画)など表現力の強化が行われています。

キラキラとしたリップルエフェクトも追加された(What’s new in Androidより)
紹介ではプライバシーに配慮して塗りつぶされるるシーンも(What’s new in Androidより)

Android 12 Beta1ではプライバシー関連の機能も追加しています。アプリが位置情報を取得する際、わざと精度を落として大体の位置情報のみ渡す機能やクリップボードの取得元を示すToast表示の追加、フォアグラウンド動作の制限(動作停止ボタンの追加)などAndroid 11までのプライバシー機能を踏襲した改善が行われています。

上記のURLではより詳細な変更点にアクセスできます。DP3までに公開されていたスプラッシュ画面APIや角丸APIの利用方法、Bluetoothパーミッションの追加(位置情報を取得するロケーションから切り離されました)、セキュリティを考慮したロック画面通知、外部ストレージへのアクセス方法、アプリ更新の自動適用(ユーザーアクションなしにアプリを更新できる機能)などが含まれています。

きれいにリデザインされたウィジェット(公式ブログより)

Android 12は予定通り検証が進んでおり、2021年5月のBeta1のあとは2021年8月から年末にかけて安定版のリリースを予定しています。

リリースまでのマイルストーン(公式ブログより)

What’s Next: セッション情報

紹介した主要機能以外にもWear OSとTizenの統合が発表される・買収が承認されたヘルスケア企業Fitbitの機能をGoogle Fitへ取り込むなど数多くの発表がありました。
Google PlayではBilling Library v4の発表をはじめとしてアプリケーションのパフォーマンス比較(250程度のアプリと比較できる)、リアルタイムクラッシュログなどヘルスチェック機能が充実しています。

数多くの新機能が発表されたGogole Play

YouTube上では個別の技術要素を扱うセッションも公開済みです。知りたい内容にあわせて確認するとよいでしょう。

Google I/O 2021は初めてのデジタル開催だと感じさせないイベントでした。
COVID-19の影響は大きく、まだまだ通常通りとはいえませんがオンラインの良さを生かしたセッション公開や翻訳の提供、アンフィシアター会場を再現したかのようなAdventureとアトラクションなど各所に工夫が見られます。

技術的な情報量もさることながらKeynoteは丁寧に作られており、画像や地図などからもコンテキストを読み取るML技術、日本語や英語といった言語の壁を越えた自然な検索、Googleアシスタントに知性を感じるレベルでのGoogleアシスタントなどAI技術利用のビジョンも伝わってきました。

Androidを搭載した機器はAndroid TV、Auto、モバイルなどユーザーとの接点を維持し続けており、セキュリティやプライバシーの観点では今後も透明性の維持が重要になっていきます。これらはブラウザでの3rdパーティクッキーの制限、FLoCなども活発に議論されており、Android 12の新機能もセキュリティとプライバシー保護に多くの労力が払われていることは明白です。Androidアプリでもパーミッションや統計情報の利用用途などすでに議論が始まっています。アプリ開発者もユーザーデータの正しい利用について改めて考える一年になりそうです。

mhidaka: Software Engineerだよ。DroidKaigi Organizer / Androidと組込とRe:VIEW。techbooster主宰。mhidaka's writings http://booklog.jp/users/mhidaka 技術書典! http://techbookfest.org